この物語はフィクションです。実在の人物・団体、用語等とは一切関係ありません。
この世が二つに分かたれている時代――この世には天界と魔界という二つの世界があった。天界は天使が支配し、魔界には悪魔が闊歩していた。その境界では度々二種族による衝突が起き、争いの絶えない地帯だった。魔法の開発競争が続き、双方とも多大な犠牲を払っていたが、圧倒的な数の差により天界は長らく劣勢を強いられていた。
そんな中、天界の神、天界ゼウスの娘アテナはいつの日からか奇妙な能力を有していることに気付き、苦慮する日々を送っていた。その能力とは、空飛ぶ鳥、宙を舞う木の葉、地表に降り注ぐ雨、そういったものの動きを止めたり、移動する速度を緩めたり、物の動きを操作できるものだった。天界の魔法学校で調べたがそのような魔法は存在しない、魔法学校の客員教授に聞いてもわからない、父である天界ゼウスでさえもその正体に見当がつかなかった。魔界との戦いに劣勢が続いていた天界では、次第に彼女のその能力を奇怪に思う者も現れていた。
ある日、一人の男によってその事象が動き出す。天界の預言者アルトリウスは次のような予言をした。
アルトリウス「アテナ様の不思議な能力を解き明かす鍵はエデンにある」
エデンとは天界と魔界のほぼ中間に存在する無の荒野とされている地帯。半信半疑の天界ゼウスを尻目に、アテナは自らの能力を知るために旅立つ決意を固める。探索の旅には天界の一等天使と遠征から帰界した六賢使も帯同することとなる。
春の小川のような長い髪と夏の恒星のように輝く瞳をしている天使が、エデン探索の旅へと今旅立つ。