
翌日、アテナ一行は再びエデンの園へと足を踏み入れていた。昨日の男達は障壁となり得る存在ではあったが、アテナの自分の力を知りたいという好奇心は彼女たちを天界へと戻すどころか再びエデンの園奥地へと足を運ばせるのだった。
ライガ「やっぱり来たな」
静寂を打ち消す力強い佇まい、否、殺気に満ちたその表情は飢えた獣そのものだ。
アテナ「その様子だと予想通り、というところか」
獣の威勢を弾くように赤い髪の天使が答える。
アテナ(昨日とは異なり、今日は二人揃ってのお出迎えか)
アリス「昨日は負けちゃったけど今日は勝つ!」
ライガ「よう、あんたが大将だろう。自分の力に自信があるなら1対1で勝負しないか?」
アテナに向かって男が挑戦するように言い放つ。
シンデレラ「アテナ様! このようなやつの誘いに乗る必要はありません!」
アテナ(私と1対1か――何か企んでいそうね)
アテナ「――いいだろう、私が相手をしよう」
シンデレラ「アテナ様!」
カミーロ(誘いにのってきたか、この世に俺の知らない魔法はない。ライガが勝てなかったという天使の実力、見せてもらうとしよう)
アテナ「大丈夫よ、シンデレラ」
オーロラ「アテナ様ったらぁ、頑張り屋さんなんだから」
カミーロ(あの赤髪の天使、魔法力は良くて中の上というところか。右手で純魔力が増強されているのは強化型の職杖を装備しているからだろう。あれなら遠隔型の非物理魔法攻撃にぴったりの武装だが――だからと言ってライガが勝てないという理由にはならない)
にらみ合い、微動だにしない二人。風の音さえ聞こえない永遠の静寂。
その場の誰も声を上げることは許されない。
本来耳に入るはずは荒野の風音。
だがその静寂は、男の動きによって打ち破られ―ー同時にアテナもそれに応えるように走り出す。
ライガ「見え見えなんだよ! お前の動きは!」
カミーロ(何か特殊な能力を持っているというのか――!?)
再びアテナに向かって閃光が走る、稲妻のような刃がアテナへと向かう。
アテナ(見えた、昨日と同じ投擲――今度も絶対止められる!)
カミーロ(!?)
一直線に向かっていた刃は凍ったかのように動きを止め、空中で静止する。
ライガ「またそれか! だが今度は近づけさせん!」
一つ止めればまた一つと次々に刃が放たれる、アテナは一つ一つそれを止めていく。
アテナの力の正体はライガにはわからない。だが、先の戦闘からライガは自らの油断、慢心を認めたのだ――この未知の能力には全身全霊をもって挑まねばならぬと。
アテナ(くっ、昨日より投擲される数が多い――これでは近づけない!)
カミーロ(なんだ――何なんだこれは――第二世代の無機魔法――いや重力操作か――!?)
ライガ「俺の刃の全てを止められるかあああ!」
アテナ「刃の数を増やして近づけない策か!」
カミーロ(いや違う、重量操作ではない――明らかに横の移動が静止している――)
アテナ「面白い、刃を増やすのでればその全てを止めるまで!」
雨のように降り注ぐ刃を止めつつ、アテナは少しずつライガへと近づきつつあった。
白雪姫「アテナ様! 近づいていますよ!」
カミーロ(この世の全ての魔法を把握している俺が見たことのない魔法だと――)
ライガ「止められるものなら止めてみろ! 全てを止められるならな!」
止められるものなら、そう言い切るのも無理はないだろう。1秒に1発以上の刃を放っているのだから。
カミーロ(まさか――俺が見たことのない魔法といったら――――)
赤ずきん「アテナ様、つっこむのです!」
二人の激しい戦いが続いていたところに、その衝突を打ち消さんとする声が轟いた。
カミーロ「二人とも、そこまでだ!」
アテナ(!?)
ライガ「なぜだ兄貴! 決着がつくまでやらせてくれ!」
カミーロ「待て、あの天使達に聞かなければならないことがある」
ライガ「くそっ、なんでだよ!」
不満そうなライガを尻目に、アテナ一行へと歩いていく。アテナも既に動きを止めていた。
戦場で待てと言われて制止するものはいないだろう。その男の鋼のような声に動きを止めざるを得ないほどの威圧感があっただけ。
カミーロ「少し――話をしてもいいだろうか」
アテナ「なに!?」
コッペリア「アテナ様、殺気はないです」
シンデレラ「今更話だと――」
アテナ「いや、シンデレラよ、話をする気があるのならばここは聞くべきでしょう」
進んできた男の前に悠然とアテナが進む。
アテナ「私は天界ゼウスの娘、アテナ。我々の目的は侵略ではない。それで、いったい何の話をしたいというの?」
カミーロ「天界ゼウス!?」
アテナ「ん?」
カミーロ「いや――すまない。話というのは他でもない、その能力について伺いたいのだ」
アテナ「カミーロといったかな、私はこの能力を調べるためにエデンの園へ来たの。この能力の正体がわかるのであれば何でも答えるつもり」
カミーロ「話が早くて助かるな。では、アテナよ――」
シンデレラ「貴様! アテナ様を呼び捨てにするなど――」
アテナ「まあまあ、彼らは天界の住人ではないんだから。この場は大目に見ましょう」
カミーロ「ふむ、では――その能力をこれに使ってみてくれないか」
取り出したのは何の変哲もない小石、魔法の小石というわけでもないだろう。
アテナ「わかった」
カミーロ「それでは、まずこの小石の動きを止めてみてくれ」
そう言うとカミーロは頭上へ向かって小石を放り投げた。アテナは手をかざし――小石を空中で止めてみせた。
カミーロ「ふむ、では次にこの小石を止めてみてくれ」
今度は小石を真横へ向かって放り投げた。アテナは同様に小石へ向かって手をかざし、小石は空中で静止したのだった。
カミーロ「なるほどな、では最後に一つ聞かせて欲しい。その能力は生まれつき持っているものか?」
アテナ「いや、いつの頃からか使えるようになったの。天界で調べても正体がわからず、予言師の預言のもとにこのエデンの園へ――」
カミーロ「ふっふっふっふ――」
アテナ「え?」
カミーロ「ふあっはっはっはっは!!!」
ライガ「兄貴――?」
アテナ(なにを笑っているの――!?」
カミーロ「これが笑わずにいられるか、ライガよ! この世全ての魔法を知っているこの俺が未知の魔法を目にしているのだぞ!」
白雪姫「この世全ての魔法を!?」
オーロラ「あら、この世全てとは――たいした自信ですわね」
アリス「でも未知の魔法ってことは結局正体はわからなかったってことねー」
カミーロ「いや、ここまでのあらましを聞いて、その正体には見当がついた」
アテナ「それは本当!?」
ライガ「まじか!」
カミーロ「ああ、おそらく――――」
その場にいる全員が息を呑み、真夜中のような静寂が広がる。
カミーロ「おそらく――――その正体は継承呪法」
アテナ「継承呪法ですって!? 世界に一つずつしかない合計10種の神の力と言われた魔法のこと!?」
驚くアテナの横から二人が口を挟む。
白雪姫「継承呪法ということはないですね」
オーロラ「そうですねぇ、ありえませんわね」
カミーロ「どうやら魔法に詳しい者がいるようだな、反論を聞こうか」
白雪姫「世界に10種存在する継承呪法は世界を構成する力の源とも言われるものですが、10の継承呪法のうちでアテナ様が持っているような種類はありません」
オーロラ「10種の中に、物を空中で静止されるようなものはありませんわね」
ライガ「俺もそう思うぜ、兄貴。継承呪法なら俺もだいたい知ってるが、あんなものはないはずだ」
カミーロ「それはそうだろうな。何と言ってもこれは――隠れ継承呪法」
アテナ「隠れ継承呪法!?」
白雪姫「まさか! 隠れ継承呪法はおとぎ話じゃ!?」
オーロラ「まぁ――」
カミーロ「歴史の表舞台には姿を現さなかった第11番目の継承呪法、それがその力の正体だ」
その場にいる全員が静まり返る中、白雪姫だけが口を開く。
白雪姫「おとぎ話かと思っていましたが、実在していたということでしょうか――」
カミーロ「そうだな、継承呪法は知っての通り、10種類はそれぞれ一つずつだけ存在し、術者から術者へと継承していくものだ。ただ、使用するとその放出魔力により他の継承者に居場所を感知されてしまう、他の継承者に自分の居場所がばれてしまうわけだ。他の継承者に居場所を知られれば、もっと力を手にしたいと思っている継承者たちがその能力を奪いにやってくる」
ライガ「だよな、そうやって継承者が他の継承者の継承呪法を奪おうとして過去に何度も継承呪法戦争が起きてるくらいだからそれは有名な話だぜ」
カミーロ「その通りだ。そこでだ、君たちが長生きしたいと願う場合、どうする?」
オーロラ「それはもちろん、継承呪法を他の方に譲って自分が狙われない道を選ぶでしょうね」
カミーロ「そうだろうな、では何らかの理由で継承したくない、もしくはできない場合はどうする?」
ライガ「そりゃあ、その力を使用せず、どっかに隠居でもするだろうな」
カミーロ「そうだ。隠れ継承呪法はここ何世紀も姿を現していないため、おとぎ話という存在に昇華していた。それは前継承者が何らかの理由で表舞台から姿を消して隠れ住んでいたに違いない。継承呪法は使用しなければ他の継承者に居場所を知られない。その忘れられた継承呪法を、前継承者がどういうわけかアテナへと継承させた、そう考えるのが自然だろう」
ライガ「さっきの話の中で、あの力がいつの頃からか使えるようになった、というところが重要だったわけだな」
カミーロ「そうだ、そして俺が見たことがない魔法となれば――紛うことなき隠れ継承呪法ということになる」
アテナ「達観しているようだな――自信ありというね」
シンデレラ「どう思いますか? アテナ様」
アテナ様「継承呪法と断言する決定的な証拠はないけど……一度天界へ戻ってお父様にこれまでのあらましを報告しようと思う」
カミーロ「いや、君の仲間はともかく、君は天界へ戻らないほうがいい」
アテナ「え? どういうこと?」
カミーロ「君は俺の弟との戦いで派手に継承呪法を使ってしまった。他の継承者に既に居場所を感知されている可能性が高い。天界にもし継承呪法の継承者がいたら、その力を奪おうと命をねらわれる可能性がある」
アテナ「我らの同胞が力欲しさに力づくで私の能力を奪うと言いたいのか、と反論したいところだけど――」
白雪姫「反論は難しいでしょうね――前回のセフィラ戦争は天界から始まったのですからね」
アテナ(なに――この悪寒のような感じは――)
シンデレラ「天界史上の黒歴史とも言える何とも遺憾な事件と言えよう――」
カミーロ「その通りだ、天界の一人の継承者が、他の天使が継承している継承呪法を奪おうと争いに発展し、いずれその争いは魔界にも飛び火し、天界と魔界の全土を巻き込むセフィラ戦争へと発展した――どうした、何か探しているのか?」
アテナ「いや――何かが近づいてくるような気が――」
シンデレラ「まさか悪魔!? コッペリア、周囲の状況は?」
コッペリア「この周辺に悪魔の魔力は感じない」
????「継承者を探知――」
シンデレラ「いつの間に!」
アリス「悪魔!?」
アテナ(なにこいつは――コッペリアに感知されず近づくとは――しかもこいつどこかで見たことがあるような――」

????「よもや継承者がかような小娘だとは」
赤ずきん「見たことがあるような気がしますのです」
男の顔に浮かび上がるのは赤き禍々しい紋章。
白雪姫「お前はまさか――ベリト!?」
ライガ「ソロモン72柱の一柱のベリトだと!?」
カミーロ「迂闊だったな――まさかこれほど大物が来てしまうとは――」
シンデレラ「コッペリア、接近を感知できなかったのか!?」
ベリト「感知など――世の小者と同一にされるとは笑止。高位悪魔であれば魔力に鍵をかけることなど造作もないこと」
ライガ「面白い! ソロモン72柱のベリトか、打ち取って名を上げる!」
カミーロ「やめておけライガ、まともに戦えば全滅するぞ」
ライガ「なんだって!?」
カミーロ「しかもこのベリト、おそらく継承呪法を持っているな」
アテナ「継承呪法!?」
ベリト「そこの赤毛の小娘よ、うぬの持っている継承呪法を余に献上せよ」
オーロラ「あら、やっぱり継承呪法で間違いないようですのね」
カミーロ「アテナ、そちらで近接戦闘が得意なのは誰だ!?」
アテナ「アリス、シンデレラ、赤ずきん、コッペリアよ」
カミーロ「アリスとシンデレラというのは君達だな」
アリス「そうだよ!」
シンデレラ「左様だ」
カミーロ「ここは協力して何とかやつを抑えることを提案する、ただしアリスとシンデレラはここに残るんだ」
アテナ(何か策があるようだな――ソロモン72柱は確かに協力しなければ対抗できないかもしれない)
アテナ「いいでしょう、あなたの策に乗りましょう」
カミーロ「ライガ、投擲ではなく近接攻撃のみで最短距離から物理攻撃のみをしかけろ」
ライガ「おーけー」
カミーロ「いけ!」
アテナ「コッペリア、赤ずきん、攻撃開始!」
コッペリア・赤ずきん「おー!」
大きめの剣のような武装のライガ、斧の赤ずきん、大鎌のコッペリアの3人が同時にベリトへ向かっていく。
アテナ「では私と白雪姫で遠距離から援護を」
白雪姫「はい!」
カミーロ「いや、だめだ」
アテナ「なんですって!?」
カミーロ「やつに遠隔攻撃をしかければ十中八九、魔法のカウンターを食らう。そのため遠隔攻撃は厳禁だ、物理・魔法に限らずだ」
アテナ(この男、悪魔にも詳しいようね――)
カミーロ「それにさきほど伝えた通り、やつは継承呪法を持っている。今ここにいる全員がいかに戦おうと勝つことは不可能だろう」
アテナ「勝てないですって――ではなぜあの3人に近接攻撃を?」
カミーロ「懐に入っていれば遠隔魔法の直撃を受けず済む。こちらの準備を進める間の足止めをしてもらうためだ」
何らかの策があるということがその場にいる全員が把握した。
カミーロ「傷の手当ができるものがいたら中距離で待機、手当のみとし攻撃はしないようバックアップしてほしい」
アテナ「了解、白雪姫、オーロラ、お願い!」
白雪姫「承知しました」
オーロラ「はあーい」
カミーロ(黒い魔力放出光――継承呪法第三法ビナーか――」
ベリトとの戦いに目を向ける。怒涛のような攻撃を繰り返すライガの合間にコッペリアと赤ずきんが大型の武器で強力な一撃を繰り出している――ベリトが傷を負ったような様子は見受けられない。
シンデレラ「あの3人が同時に攻撃しても当たらないのか!?」
ライガ(いや、当たらないんじゃねえ――)
赤ずきん(さきほどからほぼ完ぺきなタイミングで何発も攻撃をヒットさせているのです)
コッペリア(でもこいつの黒い衣のようなものに刃が通らない――)
カミーロ「やはりな――継承呪法の影響は絶大だな。物理攻撃では勝負にならない」
アテナ「あの黒い衣が継承呪法なのね――」
カミーロ「その通りだ、黒を象徴とする、継承呪法第三法ビナーだ」
アテナ「でも、何か策があるのでは? だからこそアリスとシンデレラをこちらに残したのでしょう」
カミーロ「話が早くて助かるな。さきほども言ったとおり、この場にいる人員でやつを倒すことは不可能。だが、やつを倒さなくともこの状況を打開できる」
アテナ「やつを倒さずにこの状況を?」
カミーロ「そうだ、まず、君は槍使いだな?」
シンデレラ「シンデレラだ。槍専門ではないが、剣・大剣・槍は特に得手としている」
カミーロ「よし、あと君は―ー」
アリス「アリスだよー」
カミーロ「ふむ、君は移送系の魔法が使えるな?」
アリス「移送の扉のことかな」
カミーロ「あの扉はどこにでも出せるのか?」
アリス「んーどこにでもっていうのは無理だけど目で見える距離なら」
カミーロ「問題ない、では策を伝える。まず、アテナはやつが遠隔魔法攻撃をしかけてきたらそれを全て止めるんだ。やつの魔法は炎系の遠隔攻撃魔法だ、一つでも止め残すと必ず誰か死ぬことになる」
アテナ「大丈夫、意地でも全て止めてみせる」
カミーロ「その後、アリスがやつの後ろに気付かれないよう扉を出し、開く。次にシンデレラ、君が槍を使ってベリトを吹き飛ばして移送の扉へ放り込め」
シンデレラ「吹き飛ばす!? あのベリトを!?」
カミーロ「そうだ、槍使いなら知っているだろう、ファイナルストライクを発動させるんだ」
シンデレラ「一つの武器を犠牲にして消滅させるかわりに爆発力にかえるファイナルストライクだな。だが、ファイナルストライクの威力は武器の強度に比例する。私の持っている槍では大した爆発力には――」
カミーロ「そうだろうな――ではこの槍ではどうだ」
カミーロは持っている分厚い本を開くと――その中に手を、肘くらいまで差し込んだ。
アテナ(なにーーあれは!?)
本のページが光り輝き、本の中から一本の槍を引き抜いた。
アテナ「この前いつの間にか武器を持っていたのはそんなにしかけになっていたね――」
シンデレラ(あれは――空間を操る界術か――?)
カミーロ「ふむ、ではシンデレラ、これを使え」
シンデレラはその青く、豪奢とも言える槍を受け取った。
煌びやかに光り輝き、夏の海のように澄んだ青。
無骨な荒野の光景に命を与えるかのような鮮やかな風貌だった。
シンデレラ(なんなんだこの神々しく煌びやかな槍は――)
アテナ(見たこともないくらい美しい形状ね――)
カミーロ「始めるぞ、アリス、扉を」
アリス「いくよー、Ostium, appare!」
両掌を大きく開き、前方へと突き出す――両手に魔力が充填し、蒼光を帯る。
戦っているベリト達の後方約5メートルの場所に扉が現れ、開いていく。
カミーロ「シンデレラ、武器の構えを、撃つタイミングは指示する」
シンデレラ「投擲準備完了、いつでもいける」
カミーロ「よし――近接戦闘中の全員、散れ!」
ライガ(兄貴のやつ、何かやるつもりだな)
赤ずきん(よくわからないけど離れますのです)
コッペリア(いったん離れます)
ベリト(前方に純魔力の発生を感知)
ベリト「Vires malae in inferno, congrega ad me. Combusta eos in potentia ignis valid」
カミーロ「しまった、アリスの魔力を感知されたか!」
ベリト「ゲヘナフレイム!」
アテナ「きたな―ーひとつたりとも逃さない!」
アリスに向かって放たれた3つ大火球。見たこともないくらいの大きさと炎の激しさ。
アテナ(なにーーこの大きさはーー)
それぞれが身長の倍くらいはある大火球。
アテナ(でも、ここで止めなければ間違いなくアリスに当たってしまう)
呪文を唱えるべきと感じた、否、過去に唱えたことがある気がした。あいまいな記憶のようで、はっきりとした言葉がアテナの頭の中に浮かんでくる。
アテナ「オ……オ……三次元空間干渉!!」

カミーロ(!?)
速度と強さをもって向かってきたその大火球は3つともアリスの直前で静止した。
ベリト(あの魔法は――)
カミーロ「よくやった!! 今だ、撃てー!」
シンデレラ「ファイナルストライクー!!!」

そう言い放った次の瞬間――。
シンデレラ「な――」
まがまがしいほどの力強い閃光。
小城一つ分の大きさはあるだろう大爆発が起こる。
シンデレラ「な――なんなんだ! この威力は!」
ベリト「ぐっ――ぬ――」
景色が見えなくなるほどの大爆発によりベリトは後方へ弾き飛ばされ――扉の中へ吸い込まれていく。
カミーロ「扉を閉めろ!」
アリス「わかってる!」
扉に映っている景色を消していくように――移送の扉が閉められた。
アテナ「終わった――のね」
カミーロ「ふむ、無事完了だな。息の合った連携、お見事」
ライガ「やつをぶちのめせなかったのはちょっと残念だがな」
赤ずきん「アテナ様、いつの間にあんな呪文を?」
アテナ「なぜだろう、どこかで唱えたことがあるように突然頭に浮かんできたの」
カミーロ(やはり、時を操作する魔法であることに間違いないようだな)
アリス「あっはっはー―――すいません、失敗しちゃいました」
アテナ(!?)
カミーロ「なに!? まさかまだやつがこのあたりに!?」
アリス「いえ、そうじゃなくて――予定とは異なる場所に飛ばしちゃったみたいで――」
アテナ「予定とは異なる場所とはどこ!?」
アリス「たぶん――魔界の北西のほうかな――」
シンデレラ「魔界の北西!?」
しばしその場に沈黙が続いたが――。
ライガ「あっはっは! いいぞ! 魔界の北西なら普通に移動すれば3週間は戻ってこられない、ベリトのやつめ、ざまあみろ!」
カミーロ「空間旅行の逆説だな、禍転じて福と為すというわけか」
アテナ「やれやれ、ようやく今度こそ終わりかな――」
シンデレラ「それよりカミーロ殿、ファイナルストライクの威力は武器に依存するとはいえ、とてつもない威力だった。いったいあれは何の武器だったのだ?」
白雪姫「ええ、見たことのないほどの威力でしたね」
カミーロ「ああ、あれか。あれは、海の神、ポセイドンの槍だ」
シンデレラ「ポセイドン!?」
ライガ「海の神か!」
アテナ「え、叔父様の槍!?」
シンデレラ「天界ゼウス様のお兄様の――海神様!?」
アリス「へえーシンデレラすごい! 海の神の槍をこの世から消しちゃったんだ、やるじゃないー」
シンデレラ「ポセイドンさまー! どうかお許しを!!」
赤ずきん「シンデレラ、気にする必要はないのです、槍を捨てたと思えばいいのです!」
シンデレラ「ポセイドンさま!! どうか私めに罰を!!」
コッペリア「シンデレラが壊した」
シンデレラ「お許しをー!!!」
アテナ(こらこら、あまりシンデレラをいじめるんじゃない――)
シンデレラは空を見上げて口を動かしながら何やら白い顔をしている。
オーロラ「シンデレラ、大丈夫? 顔色が死んだ魚のように白いですわ」
アテナ(それにしてもこの男、神の武器を持っている上に一瞬であのような策を組み立て実行するなんて――)
カミーロ「アテナ」
アテナ「なに?」
カミーロ「これでわかっただろう、君がどこにいようと敵は向こうからやってくる」
アテナ「――――」
カミーロ「君は既に、嵐の中にいる」
第2話「継承された力」のシール一覧 | |||
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