PerfectBlue 自作シール シール制作 創作 イラスト セフィロティックプリンセス sephirothicPrincess

 ガシャン、という粉砕音をたてて硝子の剣は粉々に砕け散った。

アリス(わっ――ほんとに粉々――でも手ごたえはあり)

 振り返ると――そこには縦に半分になったミティシュジェリカが横たわっていた。

アリス「やった――――」

 アリスは半分に切断されたミティシュジェリカをじっと見る。

 じっと見る。

 じっと見る。

 じっと見る。

 じっと見る。

 じっと見る、まだ見ている――。

 アリス(どういうこと――)

 気付いていた、天使も悪魔も半霊体、死ねばその体は消えてなくなる、なのに体が残っているということはまだ死んでいないということに。

 氷のような荒野の夜の元、立ち尽くす二人は未だに無言。

カミーロ(なるほどな、そういうことか――)

コッペリア(たぶんまだ終わってない)

アリス(どういうこと――いかにタフであっても体が半分に切断されて生きていられることなんてあるの――」

?????「驚いた、まさかそんなもの持っているなんて」

アリス・コッペリア(!?)

?????「その剣、キュクロープスの作品でしょう。どうしてあなたのような下っ端がそんな高価なもの持っているのかしら?」

アリス(ミティシュジェリカの声――体が半分になっても死なないというの!?)

 状況を察したか、危険を感じとったか、傍観していたカミーロが丘から飛び降りてくる。

カミーロ「残念ながら――ミティシュジェリカは倒せなかったようだ」

アリス「カミーロ、来てたの。って、剣は確かに命中してミティシュジェリカを倒したはず!」

コッペリア「ミティシュジェリカは半分になった」

カミーロ「いや、それでもミティシュジェリカは倒せていない。というより、本物のミティシュジェリカはここにはいない」

アリス「どういうこと――ミティシュジェリカならそこに倒れてるじゃない」

カミーロ「それは本物じゃない」

アリス(???)

コッペリア「本物――??」

カミーロ「そうだ――本物のミティシュジェリカは――お前だろう!!」

 指を差した先には暗闇で佇む青いドレスの少女。

アリス「えっ――」

コッペリア「…………」

 不安を煽るように音を立てていた荒野の強風が止む瞬間がやって来る。

 紺青の空。月光を浴びるように暗闇から歩き出る一人の少女。

青いドレスの少女「――――――――本当に驚いた、なぜわかったのかしら。そうよ、私が本当のミティシュジェリカよ」

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アリス(!?)

カミーロ「やはりな、先ほどの戦闘中、戦ってもいないお前からわずかながら放出魔力を感じた、だからお前が本体だという結論に至ったのだ」

真ミティシュジェリカ「へぇ、あんなわずかな放出魔力を感知できるの、大したものね」

コッペリア「わかったような気がする」

アリス「え、どうなっているの!?」

コッペリア「アリス、たぶん私たちが戦っていたのは偽物」

カミーロ「おそらくは人形のようなものだろう、だから斬っても打ってもダメージがなかった」

アリス「人形って――会話してたじゃない!」

カミーロ「腹話術のようなものなのだろう、あの女は自分の声を人形にしゃべらせていたんだ。古来魔界でも暗殺対策として本体の声を影武者にしゃべらせる魔法があったはず」

真ミティシュジェリカ「なるほど、あなたね、キュクロープスの剣を持ち込んだのは。おかげで私の人形劇が台無しじゃない」

アリス「何が人形劇よ! 戦いに人形を持ち出すなんてふざけてるの!?」

 穏やかだったミティシュジェリカの表情が鬼の形相にかわっていく、さきほどの姿とは異なりもはや殺気の塊だ。

真ミティシュジェリカ「舞台演出家として、上演を台無しにした責任をとってもらおうかしら」

アリス「何が責任よ! あなた、自分で戦うと弱いんでしょう! だから人形をかわりに戦わせてこそこそしてたんでしょ!」

 ごうごう、という突風。

 ミティシュジェリカに大量の魔力が集中していき、その大量の放出魔力はまるで台風のごとく周囲を吹き飛ばすように流れていく――!。

アリス(うっ――後ろに飛ばされそう――)

コッペリア(なんて規模の魔力――!)

カミーロ「くっ――ここまで圧倒的な魔力を持っていたとは――これはこの前戦ったベリト以上だぞ」

アリス「そんなまさか――」

真ミティシュジェリカ「私が自分で戦わないのは私が弱いからじゃない。私はね、鑑賞するのが好きなの、人形劇の舞台を。でも人形が壊されたとあっては私自身で幕を下ろしましょう、華々しい殺戮というフィナーレとして」

 視認できた不気味な笑顔。

 ミティシュジェリカの周囲に一つ、二つと剣が浮かんで行き、その数が数十を超えていく――。

カミーロ「まさか――あの数を同時に操れるのか!?」

真ミティシュジェリカ「知らなかったなら教えてあげる、我が家は傀儡術の名門、1体の人形を動かすこともあれば、魔力さえあればこうやって数十の対象を動かすこともできるのよ」

アリス「まさかあの数の剣を飛ばしてくるんじゃないでしょうね――」

コッペリア「あの数じゃあどうやっても避けきれない――」

ミティシュジェリカの周囲に浮かんでいるのは今や50を超える剣。

真ミティシュジェリカ「大量の剣の中で死になさい――アローズ・オブ・アスモデウス!!」

 数十の剣が一斉にアリス達へ向かう、まるで剣の雨が降るかのように。

 雨を避けることなど不可能、実際飛翔してきた剣は雨ほどの数があったのだから。

カミーロ(とてつもない数だが、跳躍で避けることができそうだ。だが――)

 視線を移動させた先には呆然と立ち尽くす二人――。

カミーロ(俺が避けても、アリスとコッペリアは死ぬだろうな――。二人にはこの剣の雨を防ぐ術がない――)

カミーロ(あいつは泣くだろうな――)

カミーロ「今ここで脱落者を出すわけにはいかないか――」

 決心したように剣に向かうは青い外套。

カミーロ「アリス、ちょっとこれを持っていてくれ」

アリス「えっ、わっ!」

 カミーロはアリスの上から本を落とすと、両手を広げて詠唱を始める。

 後ろ姿、その背中は盾の如き剛健。

コッペリア(なに――左右の手から異なる色の魔力放出光が――!?」

カミーロ(襲い掛かってくる剣の数は50――60――いや、70以上か、この数なら二つ・・でいける)

カミーロ「二人とも、伏せろ!」

アリス「え、なに!?」

コッペリア「いいから伏せて」

コッペリアはアリスの頭を無理やり地面へ向かって押し込んだ。

カミーロ(たいした数だ、ただ一つ一つの威力を落としてやれば物理的に遮断できる――)

 渦巻く旋風、神々しい魔力放出光。

 先に前へ出したのは右手。

カミーロ「キネティックシールド!!!」

 光り輝く魔法の盾がいくつか出現した後に左手をかざす。

カミーロ「エスクード!!!」

コッペリア(二つの魔法を同時に――!?)

 地面から巨大な金属の盾が三人の姿を隠すようにせりあがる、すぐに剣が着弾し、発せられたのはバリバリと金属同士がぶつかる轟音。

アリス(な――なんてすごい音――!)

コッペリア(まるで金属の雨――)

 襲い掛かる剣の雨に対峙するは二種類の盾、一方は小型だが多数存在する光り輝く魔法の盾、一方はただ一つだが巨大な金属製の盾。息もつかせぬ連続の飛来はまるで時間が繰り返されるように続く。

 やがて轟音が終わる頃、視界に入ってきたのはボロボロになった巨大な盾。

カミーロ「ふむ、やはりキネティックシールドは破られたか」

 凸凹になった金属の盾も役目を終えたかのように消えていった。やがて、エデンの荒野も元の静寂を取り戻すように舞い上がった砂塵も降下する。

真ミティシュジェリカ「なに――何なの、あなた――」

カミーロ「数は多いが――大した威力ではないな」

真ミティシュジェリカ「おのれ!」

カミーロ「お前のその魔法なら――はっ、危ない! 二人とも下がれ!」

アリス「えっなになに?」

コッペリア「いいから下がって!」

アリスを後方へ突き飛ばすコッペリア。

アリス「はうっ!」

 不意に飛び道具が茂みの中から飛んできたように見えた。

 事は一瞬。戦いに割って入るそれは空間を切り裂く線のようだ。

コッペリア(飛び道具かと思ったけど――まさかあれは腕?)

アリス(腕だ、二本の腕が伸びてきて片方は私たちに、もう一方はミティシュジェリカに襲い掛かったんだ)

 前方ではミティシュジェリカも後方へ跳躍し、腕が出てきた茂みへと鋭い視線を向けている。

?????「まさか――両腕ともかわされるとはな。すばしっこいネズミどもよ」

カミーロ(誰かいるな――)

真ミティシュジェリカ「何かと思ったら――そこの茂みでこそこそしているのはまさかガリコイツ?」

ガリコイツ「くっくっく、さすがに名門のお嬢様にはお見通しというわけか」

真ミティシュジェリカ「それよりも、天使ならともかく、私まで狙うとはどういうことかしら?」

ガリコイツ「言うまでもなかろう――私の魔力をさらに増強するためにお前の心臓をもらいうける」

 低く、鈍重な声が響き渡る。

真ミティシュジェリカ「おのれ、この魔界の面汚しめ!」

 その感情は業火の如く。

 落ちていた数十の剣が宙へ舞い上がり、剣先はアリス達ではなく、全てが現れた男へと向けられていた。

ガリコイツ「おやおや、好戦的なお嬢様だ。そんなもので私が倒せると思っているのかね?」

真ミティシュジェリカ「同胞の力すら狙う魔界の面汚しめ! ここで消えなさい! アローズ・オブ・アスモデウス!!」

 さきほどのように剣が男へと降り注ぐ。剣が大雨であるならば、一方の男は岩石であろう。

 あの雨の中、一向に動こうとしないのだから――いや、避けるまでもないという意思表示か――。

カミーロ「二人とも、この隙に退却するぞ」

 予想外に。

 カミーロから想定していない言葉が発せられた。

アリス「え、参戦するんじゃないの?」

カミーロ「あの男の力もよくわからないが、ミティシュジェリカが予想以上の強者だった。この乱戦に巻き込まれるのは危険だ――今のうちに離れるぞ」

コッペリア「了解」

アリス(確かに――あの剣の雨の中を突っ込むのは自殺行為――)

 その場から走りながら時折後ろを振り返る。

 丘の上。

 数十メートル距離が離れた荒地でまだ戦いは続いているようだった。

 私は何度も丘を振り返ってしまう、あの悪魔は酷薄だけど圧倒的な魔力を持っていて、その魔法は鮮やかでそして美しかった。戦いを舞台と表現していたけど、戦っている姿は実際凛々しく、見惚れていた。そのくらいの衝撃を受けたんだから――。

アリス(私もいつか――あんな強い力が欲しいな――)

カミーロ「このあたりまでくれば大丈夫だろう、一時はどうなるかと思ったが事なきを得たか――」

アリス「一体目は倒したんだから半分は私たちの勝ちよね!」

コッペリア「アリス、倒したのは悪魔じゃなくて人形」

アリス「うるっさいわね」

カミーロ(あのミティシュジェリカ、あそこまで完璧に人形を操り、長い闘いを展開して見せた。おまけに硝子の剣まで用意する羽目となった)

カミーロ(確かに操っていたのは人形なのだろう――だがあの場にいたアリスとコッペリア、そして俺までも完全に劇の一部として踊らされていた)

カミーロ「本当に操られていたのは人形ではなく――――俺たちの方だったのかもな」

 月を見上げる、敵の能力に敬意を表するように微笑を浮かべ、エデン中央部へと帰路につくのだった。

――――その後、エデン中央部。

コッペリア「戻りました」

アリス「ただいまー、ってあれ、まだ出発していなかったの?」

白雪姫「一度東部へ行ったんだけど、土神がいたの」

アリス「こんなところに土神が!?」

アテナ「ええ、だから赤ずきんが武器を改造するって。土神は物理防御力がすごいからね」

赤ずきん「今斧と弓矢を仕上げてしまうので少し待っててほしいのです!」

ライガ「おう、兄貴、お帰り。ウィートラコーヤのばあさんが来てるぜ」

カミーロ「ああ、おれが呼んでおいた。ウィートラコーヤのばあさんは以前継承呪法セフィラを持っていたから何かわかるかもしれないと思ってな」

ウィートラコーヤ「おぉ、カミーロか、元気にしてたかえ?」

カミーロ「相変わらずだ、それよりどうだ? アテナの力は」

ウィートラコーヤ「いやいや、わしではわからんよ。わしが持っていたのは継承呪法セフィラ第四法、隠れ継承呪法セフィラは見たことがないでな。あの力が継承呪法セフィラなのかまではわからんよ」

カミーロ「そうか、やはり見ただけではわからんか――」

ウィートラコーヤ「ただ、わしには相手が継承呪法セフィラの適性があるかどうか見分けることができる。あのお嬢さんは確かに継承呪法セフィラの適性があるでな」

カミーロ「ということはやはりあの力は隠れ継承呪法セフィラの可能性が高くなったな――」

ウィートラコーヤ「じゃあわしはこれで帰るでな、たまには東部にも顔を出すと良いぞ」

じっと見つめるウィートラコーヤ、目線の先にはアリスとコッペリア。

ウィートラコーヤ「なあお嬢さん、さきほど帰ってきたあのお二人もあんたの部下かえ?」

アテナ「アリスとコッペリアですね、私直属の部隊で六人いるので六賢使と呼んでいます」

ウィートラコーヤ「あの六人――――――全員が継承呪法セフィラの適性を持っているだで」

アテナ「六人全員ですか!?」

ライガ「全員――まじか!」

ウィートラコーヤ「継承呪法セフィラの適性を持つのは百人に一人と言われておる。あんた、よくもそんなめんつを六人も集めなさったな」

カミーロ「…………………」

 ほほと感心するように去っていくウィートラコーヤ。

カミーロ「アテナ、六賢使全員が継承呪法セフィラの適性を持っているというのは偶然ではありえないのだが、継承呪法セフィラの適性を持っているメンバーをあえて六人選んだのか?」

アテナ「いえ、六賢使って呼称を始めたのはお父様だけど、もうその時には六人揃っていたみたい」

カミーロ「まさか――偶然にも適性を持った六人が揃ったということか?」

アリス「揃ったというか、一人ずつ勧誘していって六人になった、って感じかな」

カミーロ「なるほど、一人ずつ勧誘して増えていき、六人になったということか」

カミーロ(勧誘していって継承呪法セフィラの適性者が偶然六人同時に揃うものなのか……?)

アリス「そうそう、私は天界に到着した時、そばにシンデレラがいて、守護が得意そうだから一緒にやらないかって誘ったの」

シンデレラ「私は天界庭園で特訓中に、弓が使えて治療もできる白雪姫を見つけて仲間に誘ったのだ」

白雪姫「私は図書館で本を読んでいるときに、崩れた本の中から出てきた自力で出てきた赤ずきんを見て、その体力と力に感心して誘ったんです」

赤ずきん「私は森でオーロラに治療してもらって、すごい能力だーと思って勧誘しましたのです!」

オーロラ「私は天界でコッペリアを見つけた時に悪魔感知の能力があると知って、これは是非とお誘いしましたの」

コッペリア「私はアリスが移送の扉で移動できるのを見て、仲間として一緒にいると有意義な仲間かと思って誘った」

カミーロ「ちょっと待った、今の話はおかしいぞ」

アリス「何がおかしいの?」

カミーロ「一人ずつ誘っていって人数が増えて六人になったというのはわかった。だが最初の一人は誰なんだ?」

アリス「最初って私じゃないの?」

カミーロ「いや、アリスはコッペリアに誘われたんだろう?」

アリス「あ、そうか。じゃあ最初の一人はコッペリア?」

カミーロ「いや、コッペリアを誘ったのはオーロラだ、オーロラを誘ったのは赤ずきん、赤ずきんを誘ったのは白雪姫、白雪姫を誘ったのはシンデレラ、シンデレラを誘ったのはアリス、アリスを誘ったのはコッペリア、これでは堂々巡りだ」

アテナ「そういえば、これでは誰が最初の一人なのか、わからない状況ね……」

カミーロ(どうやら論理の袋小路に迷い込んだようだ――)

赤ずきん「お待たせしましたー武器が出来上がったのです!」

白雪姫「ではそろそろ参りましょう」

アテナ「では私たちは東部へ行ってきますのでここの防衛はお願いします」

シンデレラ「アテナ様、お気をつけて」

ライガ「なあ、兄貴、あの勧誘の輪はどうなってるんだ?」

カミーロ「この世では小説よりも奇怪な出来事が起こるようだな――」

ライガ「妙な話だよな、今までにあんな状況は聞いたこともないぜ」

カミーロ「俺なりにあらゆる可能性を模索してみたが――考えられるのは次の二つだ、一つ目、あの中の一人、もしくは一人以上が嘘をついている、もしくは勘違いをしている」

ライガ「そうだな、そうすれば勧誘の輪にはならず、誰かが六賢使の発起人ということになるからな」

カミーロ「二つ目、全員正直に発言している、ただし何らかの情報が欠けている」

ライガ「情報か――」

カミーロ「そうだ、適性者が一人や二人であれば偶然で済ませることができるだろう。だが、全員が適性者となると偶然ではなく必然の可能性が高い。ここからはあくまでおれの勘だが――集まったのではなく、集められた可能性もあるということだ」

ライガ「誰かが六人を意図的に集めたってことか?」

カミーロ「その通りだ、そうでなければ百人に一人のはずの適性者が六人同時に集まることはない。その場合近い将来、必ず何かが起こる――何らかの目的があって集められたのであればその目的のために誰かが行動を起こすからだ。用心しておけよライガ、俺たちの予想もし得ないようなことが起こることもある」

ライガ「ああ、わかってるよ、兄貴。こういう時の兄貴の感は勘はだいたい当たるからな」

 透き通るような月を見上げる、ここまで情報が多い日も珍しい、疲労を吐き出すようにふうと息を吐くのだった。

その頃――エデン東部。

アテナ一行は東部にいる継承呪法セフィラ継承者の元へ向かっている。

白雪姫「アテナ様、継承者はまだ先ですか?」

アテナ「ええ、あと丘二つほど越えたところだからまだ先よ、でも気を付けて、私たちは継承者と戦いに来ているわけじゃないんだから」

赤ずきん「もちろん、わかっていますのです!」

アテナ(赤ずきん――敵を見つけたら突撃しそうでこわいな――)

アテナ「継承者の姿を確認するだけだからね、ついでに第何法を持っているかわかればいいんだけど――遠くから見ただけではそこまでの判断は難しいか」

白雪姫「距離があるならこのあたりはまだまだ安心ですね」

アテナ「赤ずきん、次の岩、右に曲がるからね」

 バタバタと先行する赤ずきんの後ろをついていく二人、岩を曲がった時。

赤ずきん「あ―――――」

????「あ…………」

白雪姫「どうしたの――」

アテナ「ちょっと赤ずきん――」

赤ずきん「悪魔みつけたのです!」

????「天界の天使だな、死んでもらうぞ」

アテナ「しまった! 継承者の気配に集中してすぎて悪魔と鉢合わせしてしまった!」

赤ずきん「アテナ様、白雪姫、ここはまかせるのです!」

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 後退するアテナと白雪姫。前へ出るのは弾丸のような勢いの赤ずきんだ。

白雪姫「この前荒野で見かけた悪魔では!?」

アテナ「そう――ただもっと以前に見たことがある――はっ! もしやヴァレリカ!」

白雪姫「錬金術の名門、ヴァレリカですか!?」

アテナ(戦いを避けようとしてたのに――油断しすぎた)

 斧で斬りかかる赤すきん。

 斧はその重量自体が武器だ、相手が細い剣や短剣のような武装の場合、重量で圧倒できる。

ヴァレリカ「おのれ、ばか力」

赤ずきん「そんな小さい剣では私の斧には対抗できないのです!」

 岩のように重い一撃、のしかかるよう重圧。

 ヴァレリカは時にはかわし、時には受け流す。が――。

アテナ(赤ずきんが圧倒しているけど――)

 ふと横に目をやると弓をかまえている白雪姫が怪訝な表情を受けベている。

アテナ(やっぱり白雪姫も気づいているみたい)

 前へ出ようとするヴァレリカを赤ずきんは斧の重量と大きさで圧倒していく。

白雪姫(どうして――)

 ヴァレリカの素早い攻撃も斧によって弾き、前へ出ていく。赤ずきんの武器と機動性を生かした戦い方だ。

アテナ(どうして――)

 アテナは杖をかまえ、遠隔魔法攻撃を撃つ隙をうかがっているが疑問を払拭できない。

アテナ・白雪姫(どうして――――ヴァレリカは錬金術を使わないの!?)

 劣勢の中、戦いで得手としている技を使わない者はいないだろう――だからこそ赤ずきんが優勢でも不安を払拭できるずにいるのだ。

 前進させまいとするヴァレリカ、脚を、肩を、首を切り裂かんとする攻撃は休むことを知らない。絶え間なく繰り出されるその攻撃はまるでかまいたち、剣が複数あるかのような高速の斬撃。

赤ずきん(なんて早い攻撃――対土神用に斧を大きめにしておいてよかったのです)

 斧はその重量のため渾身の一撃は恐ろしい、だが赤ずきんの斧の利点はその防御にある。対土神用に刃を大きくした斧は剣のような刃を防ぎやすい。

ヴァレリカ(攻めにくい――体の広範囲が斧でカバーされている)

 赤ずきんとヴァレリカの体格はほぼ互角。お互いに攻撃は当てやすい高さである――が、斧が大きい分、ヴァレリカの攻撃は弾かれやすく、後退を余儀なくされる。

 後退するヴァレリカに対し、赤ずきんは今こそ前へ出る時とその鋭い表情が語っている。斧による強振に備えるヴァレリカだったが――。

赤ずきん「へり打ち!!」

ヴァレリカ「―――――!」

 瞬間。

 横からやってきたのは斧のへり。予想外の攻撃にヴァレリカは飛ばされ、地面へうつ伏せに落下してしまう。

白雪姫「やった………!」

 落下した際に剣もヴァレリカの手から離れた、すかさず赤ずきんが動き出す。

赤ずきん「覚悟するのです」

 うつ伏せのヴァレリカに飛び掛かり背後から斧を振り下ろそうとする赤ずきん、その一連の速さは尋常じゃない。

アテナ(勝負あり――かな)

 だが――――ヴァレリカを一刀両断せんとする重い一撃は、重い金属音によって弾かれた。

赤ずきん(――――!?)

 時が止まったかのような一瞬、その場にいる全員がその不可思議な光景に目を取られ、まるで凍ったかのように立ち尽くす。

 がきんという音で赤ずきんが弾かれ、ごろごろと後方へと転がっていく。

赤ずきん「なに――――どういうことなのです――なぜ剣が背中側に!」

 驚愕する赤ずきん、それは無理もない、手から離れたはずの剣がなぜかヴァレリカの背中側に存在したのだから、しかもその形状は金属の直線ではなく、明らかに曲線だ。

アテナ「金属の剣がまるでヴァレリカを守るように曲がって――そう、そういうこと。温存していたのね」

白雪姫「え――?」

赤ずきん「手から離れたはずの剣が鞭みたいに曲がって――いや、あれはまるで――植物のつるのように複雑に曲がって……!」

 剣を手にとり、立ち上がるヴァレリカ。

ヴァレリカ「やっぱり――使わないとだめか」

アテナ「私も実物を目で見たのは初めて、太古の昔に失われたと思っていたのに――まだ実在していたのね――――」

白雪姫「アテナ様、まさかあれは錬金術――!?」

アテナ「ええ、あれこそ錬金術の秘法。生きている剣、生剣せいけんよ」

 

 

 

 

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